心臓・血管リハビリテーション
心臓・血管リハビリテーションとは
一昔前までは心臓が悪い人は運動などせずに、心臓に負担をかけないように安静にしなければならないと考えられていました。しかし、最近では様々な心臓病の患者様にとって、薬による治療や手術に加え、適度な運動療法を行う事が心臓のポンプ機能や身体能力の維持と向上、寿命の延長に効果があることがはっきり分かってきました。しかし、一般的には心臓病の患者様が、自分でどんな運動を、どの程度の強さで、どれほどの時間続けるのが良いのか、食事や日常生活でどういった点に注意すればよいのかという事を判断するのは難しいものです。そこで心臓・大血管リハビリテーション(以下 心臓リハビリ)では医師・看護師・理学療法士・栄養士等がかかわって次のような事を行います。
- 心臓病の患者様の心臓の状態、身体能力応じて心臓に負担になり過ぎない程度の運動療法を継続して行う。
- 食糧法や禁煙、生活習慣の改善を行う
これらによって心臓病の方の再発や悪化を防ぎ、生活の質の改善、健康寿命の延長を目指します。心臓リハビリはこの10年程で心臓、血管疾患の治療の一つとして重要視されるようになり、全国の循環器専門の医療機関で行われるようになってきました(平成24年に天皇陛下がバイパス手術後に心臓リハビリを行った事も広く報道されました)。
当院では平成25年4月より心臓リハビリの設備を整備し、狭心症・心筋梗塞を最近発症された方、心不全の方、心臓や大血管の手術後の方に対するリハビリテーションを開始しました。現在は、心臓リハビリテーション指導士や呼吸療法認定士などの資格を有する理学療法士が中心になって心疾患、呼吸器疾患の方のリハビリテーションを行っております。
心臓リハビリの効果
これまでに認められている心臓リハビリの効果としては以下のようなものがあるとされています。
- 自分の運動能力を知ることができ、運動能力も改善。
身体的にも精神的にも体を動かすのが楽になる。 - これによって狭心症や心不全の症状が軽くなる。
- 症状が軽くなると不安症状やうつ状態が改善する。
- 血管の拡がりや自律神経の働きが良くなる。
血圧、心拍数が安定し、不整脈は減少する。 - 心筋梗塞、心不全の再発が減少し、生存率が改善する。
- 運動療法により動脈硬化・冠動脈疾患の危険因子が改善する。
血圧、血糖値や中性脂肪、コレステロール等の脂質の改善。
◎運動療法によるこれらの効果は時に薬の治療や手術を上回る事があります。
実際の心臓リハビリの流れ
- 心臓病に対する薬の治療や手術(カテーテル治療、バイパス手術や弁膜症の手術等)により症状の安定した方に対して、どの程度の運動が適しているかを医師・理学療法士が相談します。それぞれの方の日ごろの活動範囲や運動量、現在の心臓機能によって運動の内容・強度を決めます。
- 心臓病等で入院された方は、症状が比較的安定した時期に歩行練習等から初めて、症状等を見ながら徐々にエルゴメータやトレッドミルを使用して運動量を増やしていきます。
- 血圧等を測定し、心電図モニターを付けて(心拍数や不整脈の有無を確認しながら)、軽めの運動から少しずつ運動療法を開始します。退院後は必要であれば週に1回から3回程度まで通院リハビリを行う事ができます。
また入院中は心臓病に適した食事をとっていただき、栄養士から食事療法についてもお話します。
- 入院した患者さん以外でも通院中の方で、心臓リハビリの対象となる方は主治医と相談の上、通院リハビリを行います。週に1-3回程度の運動療法を行います。
- 医療保険にて認められているリハビリ期間は開始から5か月間になります。
◎心臓リハビリについてご不明な点等がありましたら主治医、理学療法士にご相談ください。